付随対象著作物とは

概要と条文

著作物が写り込みによって利用される時は、著作権者の権利が制限されます。
著作権者が使用をとめる権利が制限される=著作権者の承諾は必要ありません。

条文(クリックで開閉します)

条文の解説

写真を撮影したところ、背景に絵画が写り込んだ場合等、写真、映像、音声に著作物が意図せず小さく、または一部入り込んでしまった、若しくはその著作物を含めずに撮影することが、正当な範囲内で困難(分離困難)だったという場合は、著作権者の許可を得ること無く、著作物を利用することができます。

2項の利用には、ブログに掲載したりインターネット配信を行うことも含まれるため、付随対象著作物と認められる写り込みであれば、様々な方法で利用することができます。

1項の利用は、作成伝達物(撮影した写真や映像)への著作物の利用、
2項の利用は、付随対象著作物を利用した作成伝達物の掲載、配信といった利用を意味します。

令和2年法改正後の変更点

令和2年の著作権法改正では、付随対象著作物の利用の範囲が拡大され、下記のような対象への写り込みの利用が可能になっています。

  • 複製伝達行為全般に拡大(スクリーンショットほか創作性の無い固定カメラ撮影など)
  • 複製を伴わないもの(生放送・生配信
  • 付随する著作物であれば分離困難でないものも対象→子供がぬいぐるみを持って撮影する場合が例示
  • 複製又は翻案→いずれの方法によるかを問わず

インターネットによる著作物の利用実態に合わせた改正となりますが、正当な範囲内という判断に迷う要件もあります。いずれにしても創作者(権利者)の権利が制限される例外規定ですので、承諾を得ずに使用できる範囲は、狭めに解釈することが重要です。



付随対象と認められる条件

  • 作成伝達物全体に対して、写り込んだ著作物の割合が小さいこと、軽微であること、その著作物を見せる意図がないこと。
  • 写り込みを利用して利益を得る目的や、写り込みが全体の中で果たす役割その利用なしに撮影・録音することの困難性などの事情が正当な範囲内といえること。
  • 対象の著作物の種類・用途が、利用態様に照らして著作者の利益を不当に害しないこと。

付随対象著作物の判断

写り込みと考えられる例

著作権保護の対象となる著作物が、

  • 写真の背景に小さく写りこんでいる。
  • 映像の背景にたまたま映り込んだ。
  • 音声に意図せず一部入り込んでいる。(町中の音楽等)
付随対象著作物の利用(写り込み)と考えられる例のイラスト

美術展の入り口で看板とともに記念撮影をしたところ、背景に館内の作品が映り込んだ例



写り込みとはいえない例

著作権保護の対象となる著作物が、

  • 作成伝達物のメインの要素である。
  • 利益をはかって意図的に写り込ませたものである。
  • 映像に対して楽曲が重要な役割を担っている。

「重要な役割」は、例えば子供の音声を撮るつもりで撮影したらバックに楽曲が入っていた場合と、結婚式を撮影したシーンで効果的に楽曲が入っている場合とでは映像に対して曲の果たす役割が異なるように、楽曲が映像の構成要素になっているか否かが目安となるでしょう。

付随対象物が撮影の目的物になっていたり、作成伝達物全体に占める割合が大きい場合は、付随対象著作物としての利用は認められません。

施設での撮影について

この解説の中では、美術館での撮影をイメージしたイラストを掲載しておりますが、施設での撮影に際しては、著作権法上の権利の他、撮影行為そのものが他人への迷惑行為となり得る等の理由から撮影を禁止している場合もございますので、撮影の際は、各施設の利用規約をご確認ください。


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