上演権及び演奏権の続き

法律上の「公衆」の定義

著作権法上の公衆という表現は、一般的な公衆の概念とは少し異なりますので、それら著作権法で使われる公衆特定少数等の用語について解説します。
まずは条文です。

条文(クリックで開閉します)

条文の解説

イメージ的には不特定多数が公衆となるように思われるかもしれませんが、著作権法の場合は不特定<または>多数となりますので、不特定(多数・少数)特定かつ多数公衆に該当します。

  • ・不特定多数 ←公衆
  • ・不特定少数 ←公衆
  • ・特定多数  ←公衆
  • ・特定少数


公衆・特定少数の具体例

「公衆」の例

特定の人(よく知っている人同士)の集まりでも、人数が多ければ公衆として扱われます。
不特定の場合は人数にかかわらず公衆のため、例えばこのページのイラストにあるように、広くチケットを販売した場合は、たとえ1枚しか売れなかったとしても、不特定であるため公衆となります。

「公衆」にならない例

一方特定少数の観客に向けて上演・演奏する場合は公衆の定義から外れているため、著作権法第22条の上演・演奏権の対象外となり、著作権者の許可を得ること無く上演・演奏できます。
どのような人が特定の相手に該当するかについて判例では、演奏者と聴き手の間に個人的なつながりがあることが必要であると示されています。

営利性について

営利性の要件は?

また営利か否かは著作権法第22条に規定が無いため、上演・演奏権の特定少数を満たす場合は、営利であっても著作権が及ばないということになります。
一方で特定は個人的なつながりが必要と示されていることから、営利特定少数に向けて著作権者の許可を得ずに上演・演奏を行おうとする場合は、演奏者と聴き手の間に個人的なつながりがあることも満たす必要があります。

「営利の特定少数」はある?

例えば、何度も顔を合わせていて友達同士の関係性があるような少数グループでも、繰り返し参加者を募集し、誰でも加入できる会(例:有料セミナー)であると特定とはいえないなど、営利性が見られる集まりは、結局特定の要件を外れてしまうのかもしれません。


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