シリーズ著作権の制限その1の続き
この条文は非常に難解な書き方になっているので、前回の続きで補足説明します。

著作権法第30条1項四号

概要と条文

この条文は、私的使用…の条文の中で、

  • ○○の場合は私的使用でOK、
  • ただし1~4は除きます。
  • の内の4になりますので、

私的使用でも違法の内容になります。

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条文の解説

条文の( )以外を抽出

著作権を侵害する自動公衆送信を受信して行うデジタル方式の複製を、特定侵害複製であることを知りながら行う場合(は、私的使用でも違法です)

条文の意味

簡単に書きますと、違法にアップロードされたものを、それと知りながらダウンロードする場合(は、私的使用であっても違法)となり、さらにカッコ書きの中に、そこから除かれる4つの事が書いてあります。

  1. 第28条の権利(翻訳以外)
  2. 複製部分の割合が軽微なもの
  3. 表示精度その他要素に照らし軽微なもの
  4. 著作権者の利益を不当に害しないもの


1.28条の権利とは

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違法なアップロードとを知ってするダウンロードは、私的使用の範囲から除くという条文の内容です。
違法な内容のうち、28条の権利は除きます。(ただし除かれるのは翻訳以外のものだけです)

28条の権利

28条の権利とは、二次的著作物の利用に関する原著作者の権利です。
ある作品を元にして、新たに作った別の作品を二次的著作物といい、例えば小説を映画に小説を英語にマンガをアニメにといったものです。
そして二次的著作物の利用に関しては、元の作品を作った人(原著作者)にも権利があります

ストーリーを図解します

著作権法違反と知りながらパロディ作品をダウンロード

パロディ作品の例

元の作者Aの作品Aのパロディ作品BをBが作ったとします。

  • ・BはAに無断でパロディを作った。
  • ・Bは無断でそれをアップロードした。
  • ・Cは無断の物と知りつつダウンロード。

このような場合はCの行為を違法ダウンロードとして扱わないという事です。

なぜパロディ作品が除外?

本来二次的著作物を作ったり利用したりするにはAの承諾が必要ですが、無断のパロディ作品に対して原著作者Aが許容している例はよくあると思います。(自分の作品への影響がそれほど無かったり、かえって良い影響を及ぼしたりする事もあるため)
このように原作者が黙認している場合が多い事例をあえて違法にアップロードされたものを、それと知りながらダウンロードする違法行為として扱う必要までは無いという結論だそうです。

二次的著作物が翻訳のものなら、違法に翻訳された海賊版の被害もあることから、除外の対象にはなりません。



複製の割合と表示精度

2の複製部分の割合(量)が軽微なものと、3の表示精度(質)が軽微なものは、文化庁により具体的な例が示されています。

2.量的に軽微なもの

  • 数十ページ構成の漫画を数コマまでダウンロード
  • 長文構成の論文・記事を数行までダウンロード
  • 数百ページの小説の数ページまでダウンロード

絵や写真など1枚で作品全体となるものは、ダウンロードが量的に軽微とはなりません。

3.質的に軽微なもの

  • サムネイル画像をダウンロード
  • それ自体では鑑賞に堪えないような粗い画像をダウンロード

4.…不当に害しない…

著作権者の利益を不当に…については、原則違法となるものを、態様や目的によって違法から除外できるように設けられており、次の2つの要素で判断されます。

除外を判断するための要素

  • 著作物の種類・経済的価値などを踏まえた保護の必要性の程度
  • ダウンロードの目的・必要性などを含めた態様

文化庁による例示

  • 詐欺グループが作った詐欺マニュアルを←著作物
  • 被害者救済グループが無断でアップロード←違法
  • 被害者家族がダウンロード←違法?

無断でアップロードされたものを、それと知りつつダウンロードする事が違法とはいえ、そもそもの著作物を保護する必要性が無く、ダウンロードが正当な目的といえる時は、著作権者の権利を不当に害しないものとして、違法からの除外を判断できるように、この規定が設けられています。


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