前回コラムの続き

人の顔を描いて著作権?

トレース元の写真の著作権

岩崎

なぜ大統領の顔をトレースして著作権の話になるのでしょうか。

大統領の顔をトレースしようと考えた場合、大体は何かの映像や写真を元に線を引く事になるかと思います。
そうしますと、その元となった写真等には著作権があるため、トレースによって、写真を撮影した人(または写真の権利を持っている人)の権利を侵害してしまいます。
私がトレースしていた元大統領の写真は、私自身が撮影したものではありませんでしたので、写真の著作権侵害と認められる可能性があるという訳です。

Shothy

トレース元の写真は誰かの著作物よね。

著作権侵害にならない場合も

岩崎

トレースすること自体に問題がある訳ではありません。

トレースして自室に飾るのでしたら私的使用の範囲で著作権は制限されますし、線だけでその写真の表現まで模しているとはいえない程度のものや、元の写真の表現が想像できないほど大胆にデフォルメを加えるなどすれば、著作権法上は問題にならないケースもあります。

Shothy

自分の著作物をトレースする場合もね。



著作物とは何を指す?

岩崎

法律上の著作物の定義は下記のようになっています。

条文(クリックで開閉します)

「創作的に表現」とは

明確な線引きはできませんが、自分の思想や感情を創作的に表現したものが著作物として扱われますので、創作的に表現されたと考えられる部分が再現されていなければ、著作権侵害とはなりません。
いろいろな判例を見ていますと、描かれた(撮影された)物の角度や色彩、背景、光の入り方などが問題になっていることが多いように思います。

Shothy

創作性を判断する目安は、角度・色・背景・光線ね。

デッドコピー(完全な、完全に近い複製)はもちろん著作権侵害です。
判例では、ただ商品を撮影しただけのような写真であっても、デッドコピーは侵害と判断しています。

自分が創作する際の注意

自分の感性で作れば自分の創作物

美術でいえば、絵を描いたり写真を撮ったりする時に、こんな物をこんな風にこんな構図で描きたい、撮りたいと思ったように表現すれば、それは創作的に表現された著作物です。
何かを参考にする事は問題ありませんし、何かに似てしまってもそれは仕方の無い事です。

岩崎

作る時もさっきの角度、色、背景、光線をより意識すると良いですね。

模写した物や単純なイラストは?

ただし人の作品を真似たもの、参考にしすぎたものは創作的に表現されたとはいえませんし、あまりにも単純なものは、法律上は著作物性が無いといわれる可能性があります。(単純なものに著作物性を認めると自由な創作活動を阻害するため)

Shothy

自分の作品のパターンを作るのも良いわね。



有名人のパブリシティ権

岩崎

有名人の顔や名前には顧客を呼び込む力があります。

仮にそのレースが元写真の創作的な表現を再現しておらず、著作権上は問題なかったとしても、大統領ご本人の肖像権(顔を利用する権利や顔や名前を利用して経済活動を行う権利等)が問題になるケースはありますので、有名人の顔を使用する場合は注意が必要です。

Shothy

その力は勝手に使えないって事ね。

結果的に講じた解決策

岩崎

よく考えたら私のイラストは実際の元大統領じゃ無くても良かったんです。

私の場合は資料の挿絵として演説している様子を描いたもので、名前を使用するつもりも、それ自体を販売や宣伝に利用するつもりも無かったので、著作権の件が無ければ問題ない使用形態でしたが、考えてみればイラスト自体は大統領風であれば足りると思い、一から描いた大統領風のイラストに差し替えました。

Shothy

そもそもトレースが必要無かったのね。

誰かの作品を利用したいと思った時、著作権者に許可をもらえばもちろん何の問題もありません。


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